マンションの寿命を分析 〜マンションはあと何年住めるのか?〜

マンションの寿命を分析 〜マンションはあと何年住めるのか?〜

今回は、マンションの寿命について取り上げてみましょう。

このコラムの読者の方には「新築マンションしか検討していない」という人や「新築と中古の双方を検討している人」など様々かと思います。マンションの寿命というテーマはそのどちらの方にとっても重要なテーマと言えます。

「新築マンションしか検討していない」人には、今の自分を年齢を考慮して、このマンションには後、何年住めるのかな?○年後位には建て替えととなるが、その時に一時金が発生したらどうしよう(備考:修繕積立金は「修繕」のための積み立てですので、通常建て替え時の費用までは賄いきれません。目安として少なくとも500万〜1000万円は建て替え時に一時金が発生すると考えるべきです)

「新築と中古の双方を検討している人」にとってはマンションの寿命はさらに重要なテーマです。

特に一部の専門家の書籍やサイトには中古マンションを薦めているサイトが多く「中古マンションは賢い選択です」と記載されていますが、そのようなサイトに限ってマンションの寿命については触れられていないケースが非常に多くあります。

そんな引っ掛けに騙されないようにするために、重要ですがあまり認識されていない少し地味なテーマといえるマンションの寿命について解説していきましょう。

結論、マンションの建て替え寿命は40年程度

いきなり結論のマンションの建て替え寿命の年数を見てみましょう。

マンションの建て替え寿命は全国平均 33.4年であり、都市部は長くなる傾向があるため40年程度と考えましょう。

具体的な地点での建て替え寿命をあげると、「東京都40.0年」「大阪府39.2年」「兵庫県34.8年」「京都府27.1年」となっています。(京都府はデータが2件しかないため、異常値と考えるべきでしょう)

このデータは「東京カンテイ」(リンク先:上記データのPDF)という不動産専門のデータベース会社の情報を元にしているため、かなり正確な数値といえるでしょう。

また、この数値は「マンションの建て替え寿命」となっており、古くなったマンションを建て替えに至るまでの寿命となっています。

これとは別に「マンションが解体となる寿命」もあります。

このデータは「財務省・PRE戦略検討会」の発表した資料を元にすると、2005年の情報となり少し古いのですが52都市の調査した結果「RC造共同住宅 45.17年」と推計されています。(出展:財務省・PRE戦略検討会リンク先:PDF)

上記の数値は、今現時点で古い建物が建て替えや解体されていないものが含まれていないため、今後、多少は伸びてくるものと想定されますが、現時点でも相当数のマンションが既に「建て替え全国平均 33.4年・寿命45.17年」となっているため、この年数で建て替えや寿命となるケースも十分にあり得ると考えるべきです。

 

大事なのは「何年もつのか」ではなく現実を見ること。

ここで、貴方に本当に伝えたい大事なことは「マンションは何年もつのか」ではなく「実質何年で建て替えや解体されるのか」という点です。ここは絶対に勘違いしてはいけません。

「海外ではマンションは100年以上持っているのが当たり前だから、建築会社の陰謀に騙されてはいけません」という希望的観測にそれこそ騙されてはいけません。

もちろんその人たちの言い分は理解できますし、もっとマンションを大切にすべきです。また、マンションの長寿命化の取組も行われています。それも知っている上で残念ですが現状では「日本では実質40年もすれば建て替えになるのです」まずこの現実から目を逸らしてはいけません。建設会社の陰謀などではなく、住民が望んで建て替えを40年で行っているのです。(もちろん、デベロッパーの営業などはあったでしょうが…)

まだ使えるものが解体されたり建て替えされることは、別にマンションに限ったことではないはずです。

例えば、今の車は丈夫に作られていて20万キロくらいは走れるでしょう。(ハイブリッドなどは除くでしょうが…)しかし、20万キロ走れても、実際に20万キロ走る人は少数派でしょう。

10万キロですら走らない人が多数ではないでしょうか?そのような車を売った時に人気車種なら当然中古車として売られますが、人気ではない車種ならば廃車となり海外で流通されるか部品取りされる。最悪の場合はスクラップになってしまうのです。

丁寧にメンテナンスをすれば20万キロくらい乗れた車が10万キロ足らずで廃車になるのです。

例えば、戸建てや車のように、自分たちだけで維持できるかどうかを判断できるものであれば問題ありません。

しかし、マンションの場合は自分たちが維持したいと考えていても、他のマンションの区分所有者の「8割以上が建て替え賛成」となると建て替え案が成立してしまうのです。

敢えて私たちがここで厳しいこと・不利益になることを伝えているのは、結局楽観論に乗ると損をするのは紛れもない、貴方だからです。

もちろん、現在の国の方針やそれこそ建築会社の努力によって、マンションの長寿命化も可能となってきているのことや、古いマンションがまだ全て解体や建て替えになっていないことなどから、ここで記した過去のデータよりも寿命が延びていくことも期待出来る面も当然あります。

また、長寿命化の取組は下記に解説を行いますが、マンションの寿命がそこまで長寿命にならなかった場合も考慮して資金計画を検討してほしいと考えています。

上記で挙げた例の自動車のように、「まだ使える=寿命が残っているもの」でも「建て替えや解体」になることは十分にあるのです。これはマンション自体の品質が上がり、寿命が延びたとしてもそのようなことが起きるのは変わりないでしょう。

 

住宅性能表示制度について

マンションの長寿命化については、とても難しく色々な技術が用いられています。

例えば代表的なものでは「100年コンクリート」と呼ばれている、高強度なコンクリートなどがありますが色々とありすぎて、一般人ではわかりません。

そこで、役立つ目安なのが「住宅性能表示制度」なのです。

住宅性能表示制度

住宅性能表示制度

これは、法律に基づいて住宅の性能を表示する指標となっており、以下の4つの分野については表示が必須となっているのです。

  1. 構造の安定に関すること
  2. 劣化の軽減に関すること
  3. 維持管理・更新への配慮に関すること
  4. 温熱環境・エネルギー消費量に関すること

この項目の中で特にマンションの寿命に関係する箇所は(2)の「劣化の軽減に関すること」となります。

これは3段階で評価されている簡易な評価となっていますが、わかりやすいのが特徴です。

劣化の軽減に関する評価

劣化の軽減に関する評価(クリックで拡大:(引用:住宅性能表示ガイド

簡単にまとめると以下のように分類されます。

等級3 通常の使用で3世代(おおむね7 5 ~9 0 年)まで、大規模な改修工事をするまでの必要な対策が講じられている。
等級2 通常の使用で2 世代(おおむね5 0 ~6 0 年)まで、大規模な改修工事をするまでの必要な対策が講じられている。
等級1 建築基準法に定める対策が講じられている。

 

 

このような取り組みを行うことによってしっかりと造られたマンションが評価をされる、良い循環になっていけば全体のマンションの寿命も伸びていくと言えるでしょう。

 

最後に

マンションの寿命というのは、物として使えるかどうかで決まるものではありません。

竣工後、○年で建て替えなければならないという訳でもありません。

しかし、物としてはまだ使えるものであっても、社会的な価値が無くなり建て替えることになるケースは非常に多くあります。

また、マンションは区分所有者の8割が賛成すれば、残りの2割が反対したとしても建て替えが可能な仕組みとなっているのです。

マンション自体の品質が高まり、寿命は延びる傾向ではあるものの安易に建て替えを長めの期間で計算して中古マンションなどを購入してしまった場合、リノベーション・リフォームをしたばかりで思いの外早くに建て替えとなってしまっては、大きな損失となります。

マンション自体が長寿命になることを願いながらも、資金計画の面では建て替え40年と計算し、40年の時点で一時金が1000万円はかかると計画しておきましょう